アトピー性皮膚炎・・・東洋医学的考察

 アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う皮疹が生じる、良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の疾患。

 

 症状の生じ方や程度は個人差がある。発症するアトピー素因もあるが、具体的な発症原因は完全には解明されていないものの、増悪要因や予防方法などが分かっているものもある。

 

 東洋医学と鍼灸治療でアトピー性皮膚炎を考えると①脾・肺・腎の機能低下で津液代謝がうまくできなくなる②肝の機能失調による気滞で津液の運行阻害③多飲などによる水分過剰で津液に変えられず痰湿になってしまう。これら3つを推察する。

 

 痰湿の病理的な特徴として気や血の運行を阻害することがあげられ、慢性化しやすく治療期間も長くなることが多い。皮膚がジュクジュクしたりするのも、水分にまつわる問題のひとつととらえることもある。

 

 つぎに、熱症状を疑う。東洋医学には熱を虚熱と実熱という症候に大別する考えがあり、アトピー性皮膚炎では虚熱を疑うことがある。虚熱とは、主に体を養ったり冷やす物質や機能が弱まることで生じる熱である。水分補給や栄養不足、辛い物や脂っこい物を食べすぎても生じるし、ストレスによりカッカしている場合で生じることもある。

 

 すなわち、東洋医学的にアトピー性皮膚炎を考えると、「水の代謝不良や栄養不足、疲労やストレスによる気の停滞によって、気や血や津液のめぐりが悪くなり熱症状を招く。しかし、熱を冷ますだけのパワーが養われていない、身体の内側から外側(皮膚)に症状があらわれた」とらえる。

 

 すなわち、鍼灸による治療では、まずは「運化作用の促進と水分の滞りを改善すべく脾と胃、気の滞りを改善させるべく肝」を重点的にしたほうが良いと考える。そして、温める治療を欠かしてはいけない。だから、夏にクーラーがかかった治療室で長時間の置鍼をするならば、毛布をかけたり赤外線やホットパックをした方が良いだろう。 

 

 なお、東洋医学における「肝・心・脾・肺・腎」は、そのまま現代における臓器を意味するものではない。

 

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