仕事疲れと言っても、パソコンに向かっている時間が長いデスクワークだったり、営業で歩く時間が長かったり、チカラ仕事が中心だったりと、職種によって疲れ方や疲労が溜まりやすい部位は異なる。
「労宮(ろうきゅう)」というツボは、筆者自身も仕事で疲れた時に応急処置のツボとしてよく使っている。
場所は、軽く手を握った時に、手のひらの上で中指の先端があたる部分。ちょうど人差し指と中指の骨の間(解剖学的にいうと、第二中手骨と第三中手骨の間)になる。別の説もあるが、ここでは割愛する。
逆の手の親指で軽く押しただけでも、独特な嫌な痛みを感じないだろうか? あるいは、奥の方で独特の鈍い感覚が伝わってこないだろうか? それらを感じたら、もしかしたら仕事で疲れているのかもしれない。
労宮は、そもそもどのような症状に効果的とされているかというと熱中症、発熱、精神障害、胸痛などが代表的だが、意外なところでは口臭にも効くという。ちなみに、私自身は口臭に効くという印象は特にない。
また、腕を曲げる側(両腕の肘を伸ばして、手のひらを前に向けた際の、腕の前面側。筋肉の作用群でいうと腕の屈筋群側)の皮膚や筋肉の諸症状に効果的とも言われいている。
筆者は個人的に「隠れた万能ツボ」と呼んでいる。万能ツボとは俗称で、「とりあえずどんな症状にも効果的」とされるものと考えてもらえればよい。合谷や足三里などが”万能ツボ”に相当する。
労宮も自分自身でもおさえやすい位置のツボで、日ごろからちょっとした頭痛や眼の疲れ、肩や腕の痛み、緊張感や高揚感が強い時、気持ちを落ち着かせる目的などでよく使っている。
それから、一時的な眠気覚ましにも効果があると考えている。
手のひらは鍼の痛みが伝わりやすい部位だ。しかも、するどい痛みなので、気持ちいいものではない。
だから、患者さんに施術する場合、鍼で刺すことはしない。まずは、軽めの指圧とマッサージをし、鍉鍼(ていしん)といって刺さずに接触させて圧を加えるだけの鍼など、刺激が強くない治療方法を選択する。 硬結が頑固な場合は、灸を加えたりする。
さらに労宮のいいところは人と会話しながら、指圧していることを感づかれないようにセルフケアすることができる。
起立した状態やデスクの上に手を置いた姿勢で、両手の指を交互に組んだ状態で、片方の親指だけを反対側の手のひらに忍び込ませて労宮を押すことができる。相手からは指を組んでいるいるようにしか見えないのだ。まさに、いつでもどこでも応急処置ができる。
ストレス社会の昨今、自分なりの応急処置方法があるのもいいものだ。
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