中国の鍼、「太くて痛い」は本当?

 さっそく結論ですが、昔ほどではないようです。

 

 なぜ断言せずにぼやかした表現をしたかというと、太さの違いは視覚的に比較できますが、「痛み」の感覚は主観的なものなので他人と比較しにくいものです。

 

 また、広大な中国における、いつの時代のどの地域を基準にして鍼の太さを比較するかも不明瞭にもかかわらず、とかく「中国の鍼は太くて痛い」の風評が今なおひとり歩きしているような気がします。

 

 たとえば観光地ひとつとっても、「北京 夏季五輪」が開催された2008年前後で中国の都市部の環境は様変わりました。

 

 たとえば公衆トイレですが、オリンピック前に行った人の多くは、「どこもかしこも汚い」ですが、オリンピック後はそのような事はありませんでした。

 

 もちろん、個人によって受け取り方は異なりますが、特に都心部や観光地は清掃係が常駐しているところも少なくありません。(ただし、少し都心部から離れると「昔と変わらない」と、現地で生活する中国人も言っています)

 

 ちなみに、筆者が最後に北京を訪れたのは7年前、上海を訪れたのは2年前です。情報を発信する人の影響力の大きさによって、伝わり方も異なるものではないでしょうか。

 

 さて、鍼治療についてですが、日本の鍼師には中国と日本の比較をする際に「中国の鍼は太くて、刺激も強い」と言う人が多いです。

 

 実際に上海現地の中国人鍼師に質問したところ「確かに昔はそうでした。しかし、経済発展が進んだ中国の都市部では、人々の生活水準も向上し、西洋的な低刺激の治療を選択する人が増えました。中国でも「鍼灸治療離れ」の傾向がみられ、以前のように太い鍼や強い刺激は敬遠されがちなので、必然的に細くて低刺激になりつつあります」との事でした。

 

 さらに「都市部から少し離れると、今なお太くて強い刺激の治療も少なくありません。また、高齢の方にはあえて好む人がいるのも事実です。また、鍼師によっても違います」とも言っていました。

 

 日本の鍼灸学校でも、大御所と呼ばれる先生には過去事情をあたかも最近のことのようにお話しされる方が少なくありません。

 

 そういいう方々の話しを鵜呑みにし、なおかつ現地を知らない鍼師は、あたかも中国の鍼はそういうものだと吹き込まれてしまうものです。

 

 鍼の太さや刺激量などは、中国にかぎらず日本においても、施術する鍼師によって違うものです。一概に「中国鍼=太くて痛い」は成立しないと考えています。

 

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※リライト:2022/02/28