心身の不調は表情にあらわれやすいものです。また、何かしらの疾患には特徴的な顔貌がみられることもあります。
顔貌とは「かおかたち」のことで、見た目の「表情・容貌」といった方が分かりやすいかもしれません。
「蒙古様顔貌」「鳥様顔貌」「満月様願望」「ヒポクラテス顔貌」「仮面様顔貌」「無欲状顔貌」などが疾患にともなって確認できるとされる顔貌の一例です(各々の解説は省略します)。
鍼灸師が医学の基礎にするひとつである東洋医学では、患者さんの病態を把握して治療方針を立てるために、四診というものを大切にしています。四診の一つに望診というものがあります。これは患者さんの様子(表情や姿勢など)を視覚的にとらえるものです。
顔面部から推察する情報のひとつに「素因」というものがあります。これは、目や鼻などの生まれ持っての「パーツ」や肌の色といった特徴などから、その人の性格や性質を推察するひとつの材料にします。
また、顔面部を(およそ鼻まわりを中心に)上下・左右・鼻回りに区分けをし、それらに臓(肝・心・脾・肺・腎)を割り当て、肌の状態(色、陰影、肌の質感など)をチェックして、臓の状態を推察するなどします。
医療科学が進歩した現代において、顔面部を臓の働きと紐づけるのはいささか「うさん臭い」と思われがちですが、筆者の臨床経験ではあながち的外れではないことがあります。
東洋医学に対して「科学的根拠が少ない」といったことで否定的にみる人が少なくありませんが、全くでたらめなものであったら、すでに東洋医学は衰退していたであろうし、世界に広まることはなかったでしょう。まして、日本で国家資格になどなるはずがありません。
他人の機嫌を察することを「顔色をうかがう」なんて言うことがあります。違う意味で筆者ら鍼灸師らは患者さんの表情を大切な情報源のひとつとして、見落とさないように心がけていたりします。
色であれば「青・赤・黄・白・黒」、目赤があれば肝、目やにが多ければ「湿」、暑くもなく運動後でもないのに顔面部に汗がにじむようであれば「自汗」または「腠理の開闔の不調」を疑うなども望診のうちにはいります。
基本的な特徴を掴むと、鏡を見て自分自身でチェックが出来るようにもなるのでおすすめです。
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*リライト:2020年3月10日