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耳つぼ、ブームにすぎなかったの?

 一時期、「耳つぼダイエット」なるものが話題になりました。耳のつぼを刺激することで食欲を抑えることができて、結果的にダイエットにつながるというものです。

 

 耳つぼの効果については意見が分かれますが、そもそもツボの効果は特に科学的にメカニズムが解明されていないツボは、施術を受けた人の個人差が大きいものです。

 

 日本では治療対象としてあまり注目を浴びない耳つぼですが、中国では他の部位と同様に尊重されているためか、書店の鍼医療関係のコーナーには耳つぼに関する専門書が沢山あったのには驚いたことを記憶しています。ただ、日本のようにダイエット目的というよりも、しっかりした治療目的の参考書ばかりでした。

 

 また米国では、軍隊において”耳鍼”が研究され、実際に兵士の治療に導入されているという事を、昨年に放送されたNHKの特番で知りました。その番組で紹介されていた治療目的はダイエットではありませんでした。明確には記憶していませんが、どこかの部位に疼痛があって、それによる歩行の違和感だったような気がします。

 

 かつて日本で話題になっていた耳つぼダイエットが注目された理由のひとつにはファッション性がありました。耳ツボを刺激するシール部に石や宝石などを付けることにより、外見はあたかもピアスなどの装飾品を付けているようにしか見えないのです。

 

 最初にビジネスにした人は、すごいアイデアマンですね。

 

 耳つぼには反射区の考えとツボとしての効能や効果の考えがあります。すこしでも耳ツボに興味がある人ならば聞いたことがあるだろう「神門」はいわゆるツボ名で、反射区としては腰仙椎や腹の部分に相当します。

 

 穴性(つぼの効能や効果の考え方)としては万能型で、耳ツボダイエットに用いる先生もいます。また、上述の米軍におけるメソッドとしても、治療穴のひとつになっていました。

 

 反射区とは人体の臓腑にかかわるとされていて、相応する臓腑が健康でないとそのツボに反応が生じるまたは、治療対象とするもので、足裏マッサージ(リフレクソロジー:反射の意)でよく知られます。ただ、反射区は唱える先生や書籍によって、かなり違うことがあるので、筆者の場合は「治療」としての考えで施術をすることはあまりありません。

 

 ただ、患者さんとの軽いコミュニケーション目的で話しをすることはありますし、実際にツボと臓腑の関係性を感じさせてくれる反応が生じることがあるのも不思議なものです。

 

 当院での耳鍼は、自分自身で効果を感じた、数少ない部分に限定して行っています。ただ、施術後に患者さんにお渡しするシールはファッション性があるものではありません(2021年4月13日現在、「耳鍼」を目的にした「シール」の提供を中止しております)。

 

 耳鍼のリスクはわずかです。リスクのひとつは耳つぼを刺激する突起部分がシールの粘着部分に乗っただけのタイプでは、剥がす際に突起部分が外れて耳の奥に落ちてしまうことがあるそうです。それを教えてくれた学生時代の先生によると、耳の奥に入って取れなくなると耳鼻科に行くことになり、形状によってはそこそこ面倒な処置を要するとのことだったのです。

 

 別の理由は炎症です。ピアスをしたことがある人は知っているかもしれませんが、耳はけっこう簡単に炎症をおこしやすい場所です。特にアレルギー体質の人に多いですし、アレルギー体質ではない人でもなぜか耳だけはNGという人に出会ったこともあります。

 

 耳ツボは、他の部位と同様にすべてが万人に効果が期待できるとは言えないものの、いくつかのツボにはそれなりの反応を示すと実感しているので試してみる価値はあります。

 

 ちなみに、当院では「ダイエット目的」「食欲抑制目的」の耳つぼ施術は行っていません。

 

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