五十肩・肩の痛み・・・問診と理学検査

 五十肩や肩の痛みを診察する時に注意が必要なのは、どのような動きで何処に痛みが生じるかを把握することです。

 

 特に肩の可動域は人間の関節の中でもっとも大きく、動かす方向によっても作用する筋肉、人体、関節が異なります。

 

 一般的に肩関節というと、肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩甲上腕関節をさすことが多いですが、鎖骨と肩甲骨をつなぐ肩鎖関節、胸郭と肩甲骨をつなぐ肩甲胸郭関節も肩の動きにかかわる関節になります。

  

 さらに、動きにともなう痛みだけではなく、シビレ感の有無も確認します。

 

 シビレがある場合は神経性の原因を視野に入れます。また、両側性か片側性の確認が必要で、両側性の場合には医師に相談することをすすめる場合もあります。片側の場合にはジャクソン、スパーリング、イートンといった理学検査があります。腕に痛みやシビレの症状が生じたり増強すれば頚椎症性神経根症を疑います。こういった症状がみられなければ頸肩腕症候群、斜角筋症候群、過外転症候群、肋鎖症候群などが推察されます。

 

 結髪動作や結帯動作では、腱板や関節包の状態を確認することができます。結髪動作とは肩甲上腕関節の「屈曲・外転・外旋」、結帯動作は「伸展・内転・内旋」で、特に五十肩では痛みや可動域制限などの症状が顕著にあらわれ、腱板炎、腱板断裂、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、四辺形間隙症候群などが推察されます。

 

 さらに原因を絞り込むためにペインフルアーク、ドロップアーム、ヤーガソン、ダウバーン徴候、スピード、ストレッチ、インピンジメントなどの理学検査があります。

 

 なお、腱板断裂、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎などでは痛み方がかなりひどいため、医師への相談を飛び越して、いきなりマッサージや鍼灸の治療を受けに来るという人はあまりいないでしょう。

 

 圧痛点が肩甲骨外側や肩甲上腕関節の周囲であれば五十肩の可能性が高いと推察します。上腕骨の大結節・小結節、肩甲骨の棘上窩などが特に痛むようであれば腱板炎、腱板損傷、上腕二頭筋長頭腱円炎などを疑います。結節間溝に顕著な痛みが生じていれば、上腕二頭筋長頭腱炎を推察し、ストレッチテストで疑いがさらに強まります。

 

 治療部位は、腱板に原因があると考えられれば棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋。上腕二頭筋長頭腱炎であれば結節間溝。斜角筋症候群であれば前・中斜角筋。頚椎症性神経根症であれば頸椎の神経根。過外転症候群であれば小胸筋や鎖骨下筋や三角筋前部。頸肩腕症候群であれば頸椎の神経根、頸神経叢、腕神経叢、肩甲帯および上肢にのびる神経や筋肉など広域におよびます。

 

 マッサージや鍼治療においても、しっかりと問診を行って症状に見合った部位を施術しないと、期待する効果が得られにくいのも肩関節や肩こりの治療の特徴ともいえます。

 

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*リライト:2020年4月14日