患者さんの痛みや苦しみは、患者さんにしか分かりません。だからこそ、治療家は理解しようと努めるべきではないかと考えます。
そもそも「痛み」とは主観的なもので、現時点では客観的に完璧に評価することは不可能です。
痛みとは「部位」「痛み方(ズキズキ、チクチクなど)」「時間(早朝、夕方、夜間など)」「持続性(断続的、継続的)」「認知性(過去の経験や記憶など)」「感情、情動」など、複雑に絡み合うもので、個人差が大きいものです。
特に鍼灸治療では、血液検査やレントゲン撮影が出来ないため、問診(医療面接)における患者さんからの情報が治療方針を立てるうえで重要です。徒手検査も必要に応じて行いますが、そもそも問診である程度鑑別できるのであれば、あえて辛い動作を再現する必要はない場合もあります。
ベテランの治療家でも意外に多いのが、徒手検査という名目の「痛みの再現行為」です。患者さん自身に痛みの再確認をしていただいたり、治療前と治療後の効果測定を認識していただくといった目的もありますが・・・。
痛みを客観的に把握しようと試みる評価方法には「VAS(visual analogue scale)」「NRS(numerical rating scale」「EQ-5D」「BPI(brief pain inventory)」「FRS(face rating scale)」など、他にも多数存在する。
VAS、NRS、FRSのいずれかは、カルテにメモ書き程度でいいから記載しておくと術前・術後や治療経過のベンチマークになります。
筆者の場合は、疾患部位や痛み方によって、いくつか使い分けています。
筆者が大切に考えていることに「患者さんのQOL向上」があります。そこで、慢性的な痛みを訴える患者さんには「EQ-5D」用いられている質問をすることもあります。
本来EQ-5Dは難しい理論と計算方法があるため、心療内科などのお医者さんや専門家の領域ですが、質問事項そのものはいたってシンプルで数が少なくて実用性は高いと感じています。
だからといって鍼灸師が患者さんに「この検査はEQ-5Dといって・・・」といった説明をして「分析・検査」を行うのは好ましくないと考えています。ですからあくまでも参考として、カルテにメモとして残すことはあります。
患者さんの痛みを少しでも理解できれば、患者さんに合う治療方針を立てやすくなり、結果的に治療効果を高めることができるのではないかと考えています。
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(*一部修正:2020/01/09)